基本的なしつけ
チワワのしつけは、いつ頃から始めればいいのでしょう?
ここでは子犬であることを前提にお答えします。子犬を迎えてからの1週間は新しい環境に慣れる、それによる体調変化はないか注意するという点において大切な時期ですが、ベースとなるしつけについても同様に大切な時期となります。まず、食べることと排泄は生きていく以上、毎日必要なことですから、トイレトレーニングは子犬を迎えたその日から始まるとお考えください。同時に、噛むオモチャを与え、「君が噛んでもいいのはこれだよ」と教えることで、噛まれては困る物をいたずらされないよう、また、人の手や体に対する甘噛みもある程度予防することが可能になります。ある専門家によれば、子犬の顎の力は生後3ヶ月半頃に強くなってくるので、甘噛みの痛さもこの頃がピークになり、生後4ヶ月半頃までには甘噛みを抑制できていることが望ましいそうです。
リードや首輪(最初のうちはリボンのような軽いもので代用)に慣らすのは、新しい環境に慣れてからのほうがいいでしょう。それから、体のどこを触っても大丈夫なように慣らすということも、社会化という意味の他、しつけの基本に通じるものがあります。スワレやフセ、マテなど実質的なしつけは、その延長線上にあるものなので、何ヶ月からすべきというものではなく、まずは社会化と前出のような基本的トレーニングに重点を置かれるのがよろしいかと思います。
犬の行動や仕草からわかることはありますか? ②
ストレスサインの中にはカーミングシグナルと呼ばれるものもあります。これは何らかのストレスがかかる状況の時に、自分や相手に「まぁ、ちょっと落ち着きなよ」といったクールダウン効果のあるサインと言われます。たとえば犬を叱ったとして、その時に犬があくびをしたとします。それは「ママ、そんなに叱らなくてもいいじゃない。もっと落ち着いてよ」と言っているのかもしれません。また、初めて会う犬が吠えついてきた時、その相手に対し、自分の体の横側を向ける形で弧を描くように通り過ぎたとしたら、「そんなに吠えなくていいよ、僕、何もしないから」と言っているのかもしれません。主なカーミングシグナルには以下のようなものがあります。
- あくびをする。
- 鼻の頭を舐める。
- 相手に対して顔をそむける。
- 体を掻く。
- 座る、伏せる。
- オシッコをする。
- 体をぶるぶる振る。
- ゆっくりとした動作をする。
- 誰かと誰かの間に割って入る。
- 相手に体の横側を見せて、弧を描くように歩く。
注:カーミングシグナルは犬が見せる普段の仕草と同じであるため、その仕草が見られたからといって即座にストレスがあると判断するのは間違いで、その時に犬が置かれた状況から判断しなければいけません。また、上記のストレスサインにしろ、病気が原因の場合もありますので、気になる時には動物病院で診てもらってください。
犬の行動や仕草からわかることはありますか? ①
一つには、ストレスサインを理解しておくと犬との生活に役立つのではないでしょうか。人間でもストレスがかかるとイライラしたり、過度になると病気に発展したりするように、犬も同様にある種のサインを示すことがあります。たとえば、次のようなものです。
<体>
- 下痢や便秘になる。
- 食欲が低下する。
- 体が震える。
- 体が硬く固まって緊張している。
- 呼吸が荒い。
- フケが出る、皮膚が乾燥する、脱毛する、アレルギー症状が出る。
- 目に緊張感があり、時に充血している。
- パッド(肉球)が汗でにじむ。
<行動>
- 吠え続ける。
- 落ち着かない。
- 粗相をする、トイレの回数が増える。
- 一定の場所を行ったり来たりするような同じ行動を何度も繰り返す。
- 自分の体を何度も繰り返し舐めたり、噛んだりする。
- カーミングシグナルが見られる(*以下のQ&Aを参照)。
<内面>
- 活力がなくなる、元気がない。
- 攻撃的になる。
結構吠えるので近所迷惑にならないかと心配です。
犬が吠えるにも警戒や不安、ストレス、要求、痛み、甘えなどいろいろな原因があります。まずはその原因をさぐり、可能なものはできる限り排除してみるのがいいでしょう。たとえば、窓際に犬の寝場所があった場合、外を通る人や車が気になるなら、寝場所を窓から離すことで吠えが軽減することもあります。ケージの中で吠え続けている場合には、スリッパや新聞紙のようなものをケージに軽くぶつけるという方法もあります。ただし、自分がそれを投げたとは犬にわからないようにするのがポイントです。つまり、吠え続けると犬にとって不快なことが起こると思わせるように仕向けるわけです。静かになった犬を褒めるにしても、特にテンションの高い犬では大袈裟に褒めるとさらに興奮して吠えるということがありますからほどほどに。また、犬の要求に対してすぐに応えていると、吠えれば要求が通ると犬は覚えてしまいます。オーナーさんが吠え癖を作ってしまっているケースもありますので、犬に対する日頃の自分の態度を見直すことも必要ではないでしょうか。
散歩に出てもなかなか歩きたがりません。散歩が嫌いなのでしょうか?
時折、チワワではこういうケースを耳にします。何かが怖いのかもしれません、地面やコンクリートなど足の裏に感じる感触に慣れていないために不安なのかもしれません。散歩デビューの時にいきなり賑やかな場所に行くと怖がってしまい、トラウマを作ってしまうこともありますので、できれば最初のうちは静かな場所から散歩を始めることをお勧めします。歩かない場合は、リードを軽くちょんちょんと引っ張ると、それに促されて歩き出すこともありますが、人間でも引っ張られると反射的に逆方向に引っ張り返すのと同様に、やり過ぎは逆効果です。それでもダメな場合は、逆方向に歩いてみる、好物のおやつやオモチャで気を引いてみるという方法もあります。1~2歩でも自分で歩いたなら褒めてあげ、一度にたくさん距離を歩こうと思わず、少しずつ距離を延ばすようにしてみてください。甘噛みにしてもそうですが、多頭飼いであれば仲間同士じゃれ合うことからストレスの発散にもなり、噛む力の抑制も自然と覚え、怖がりだったコに自信がつくこともあります。ただし、これは個々の子犬の性格やオーナーさんの環境にもよりますので、安易に多頭飼いすることをお勧めしているわけではありません。
甘噛みに困っています。対処法はありますか?
人の手や体に強く歯をあてることは将来的に他人にケガをさせてしまう危険性もありますので、やはりやめさせたいものです。子犬が強く噛んできた時には、「痛い!」と大きな声をあげます。この時、オーナーさんが大袈裟に騒ぐと子犬がかえって興奮し、もっと強く噛んでくることがありますので注意が必要でしょう。子犬が口を一瞬離したなら、手は見えないように隠してしまいます。しばらく様子を見て、再度手を見せた時に噛んでこないようなら褒めてあげ、噛んでもいいオモチャを与えます。子犬が落ち着かないようなら、遊びを中断して、他の用事でもしましょう。これを繰り返してみてください。もしかしたら、子犬はやることがなくてつまらないのかもしれません。散歩に連れ出して外の空気をあてる、ワクチンが完了しているなら少し歩かせてあげるだけでも落ち着くこともあります。
チワワに興味があるのですが、これまで犬を飼ったことがないので、ちゃんと飼えるか心配です。
チワワに限らず、犬と暮らそうと思った時には、犬はどういう動物なのか、犬の習性や犬種の特性、歴史、病気などについて、ある程度知識を得てから犬を迎えることをお勧めします。そうしたことを知らないままに飼うことによって、犬への接し方や対処法を間違え、問題行動を生じさせてしまう、病気にさせてしまうというようなこともあります。せっかく子犬自身はいい素質をもっていたとしても、それでは残念なことです。本来、犬は群れで生活をする動物ですので、オーナーさんは犬にとって信頼できる相手でなければなりません。犬は経験から学ぶ動物です。たとえば、イタズラをある時は許し、ある時は叱るというような一貫性のない態度で臨めば、犬からの信頼をなくすことでしょう。また、犬も自分にとって“いいこと”は脳にインプットされますので、何か行動を起こした時に嬉しいことや楽しいことがあれば、その行動が身に付きやすくなります。逆に嫌なことがあればそれは嫌いなものの対象になり、つまらないことがあればその行動はやがて消えていくでしょう。その他、仲間とコミュニケーションをとるツールの一つとしてボディランゲージがありますので、それをうまく読み取ってやれるように努力することも大切です。
トイレのしつけがなかなかうまくいきません。
まず申し上げたいのは、迎えた子犬が完璧にトイレをマスターしているものと思い込まないようにお願いいたします。もちろん、子犬をお渡しするまでの間にトイレトレーニングは行っておりますし、一般のご家庭とは違って犬が多数いるため、先輩犬を見習ってトイレも覚えやすい状況にはあります。しかし、まだ生後2~3ヶ月という発育途上の幼い月齢であることから、“完璧”を求めることには無理があるのと同時に、新しいお宅に行き、環境ががらりと変われば、「どこでトイレすればいいんだろう?」と迷いもし、失敗もしがちになります。各ご家庭で一からトイレトレーニングをし直すというようなおつもりで対処をお願いできればと思います。
トイレの覚えが早いか遅いかは子犬の性格によっても違います。大事なのは、一に失敗をさせないこと。二に、他のしつけはともかく、トイレトレーニングに関しては叱らないこと。
ケージやサークルからいきなり広い部屋に、それも長時間出して自由にさせるのは失敗の原因となり、NGです。ほんとうはトイレを覚えていても、その場所まで間に合わず、結果的に粗相となってしまうこともあり、また、急に広い場所へ出てトイレがどこにあるのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。本来ならば失敗せずに済むものを、逆に失敗するチャンスを作ってしまっているとも言えます。トイレトレーニングがうまくいかないという場合、このようなケースが多いのではないでしょうか。
そして、失敗に対して叱るとどうなるか。トイレを覚えるどころか、逆にトイレをすること自体がいけないことなのだと思ってしまうこともありますし、子犬の性格によってはオーナーさん自身を怖がるようになってしまうこともあり得ます。オーナーさんの顔を見ただけで緊張のあまりオシッコを漏らすようになったり、体が固まったりするようになると、トイレトレーニングが更に難しくなってしまうことでしょう。トレーニングかける時間も倍増するということです。そればかりか、子犬のその後の性格形成にも影響を与えてしまう可能性も考えられます。
ご参考までに、当犬舎がお勧めするトイレトレーニング法をご紹介します。
ステップ1:
これまで生活していた環境により近ければ、その分ストレスがかかりませんので、最初のうちは当犬舎での生活スタイルに近い環境を極力作ってあげるようにしてください。ケージ(幅約90cm×奥行約60cm×高さ約50cm)の中の片側にはベッドを置き、残った部分にはトイレシーツ2~3枚程度を敷き詰めます。可愛さのあまり、自由に遊ばせたいところですが、そこはぐっと我慢。少なくとも1週間程度はケージの中で過ごさせるようにします。シートの上でちゃんとトイレができたら、もちろんたくさん褒めてあげてください。
ステップ2:
次にケージから外に出る時間を作ります。はじめは行動できる範囲を狭く設定し(畳1~2畳分程度)、そこをサークルで囲い、その中の適当と思う場所にトイレシート6枚程度を敷き詰めておきます。この時、トイレシートだけでは足が滑ってしまうので、滑り止め代わりにシートの下に新聞紙を敷いておくといいでしょう。最初の段階ではその中で遊ばせる時間も短めにします。様子を見て大丈夫そうであれば、徐々に行動できる範囲を広くし、遊ぶ時間も長くしていきます。敷くトイレシートの数は同じく6枚程度です。もし、トイレの場所を迷っている、別な場所でしようとしているような素振りが見られたなら、トイレシートへと誘導してあげてください。どうしてもシートとは違う場所でトイレをしてしまう場合には、シートをその場所に移動するようにします。つまり、人間の都合や思い込みでトイレの場所を決めるのではなく、そのコに合わせてあげるということです。または、違う場所でトイレをしそうになったら、すかさずお尻の下にシートを敷いてあげるというのもいいでしょう。そうすることによって失敗を防ぐと共に、シート自体をトイレだと覚えさせることができます。
ステップ3:
100%トイレシートでトイレができようになったら、囲ってあったサークルを取り払って部屋の中で自由にさせてみます。しかし、過信は禁物です。子犬の行動をちゃんと観察してください。もし失敗するようであれば、前の段階に戻ってトレーニングをし直します。
私の経験上、大型犬より小型犬の方がトイレトレーニングには根気がいるように感じます。更には、チワワは超小型犬ゆえに繊細な面があり、より気配りと根気が必要と言えるでしょう。トイレをマスターするまではマン・ツー・マンの姿勢で臨むのがベストだと思います。